SMBのvSANファイルサービス構築手順

皆さま、こんにちは。
VMware担当の河野です。

今回はvSAN 7.0 Update1から追加された、vSANファイルサービスのSMBサポートについて検証をしてみましたので、その手順を紹介いたします。

■vSANファイルサービスとは

ファイルサービス用のVMをvSANクラスタ上に展開し、ファイル共有(NFS/SMB)を提供するサービスとなります。クラスタレベルのサービスとなっており、フェイルオーバーやhealth監視、障害時に回復する機能も持っています。数クリックで展開ができ、設定が非常に簡単です。利用用途としては、ホームディレクトリ、ユーザープロファイル、共有ファイルサーバー、クラウドネイティブワークロードのデータ置き場として利用ができます。vSANのEnterpriseから利用可能な機能となります。

もう少し内部について詳細をお伝えいたします。
vSANクラスタ上で、ファイルサービスを有効化すると、vSANクラスタ内にvSAN分散ファイルシステム(VDFS)が作成されます。VDFSはvSANと密に連携して、I/Oを渡したり、共有の自動作成や拡張を行ったりします。
ファイルサービスのコアである、ファイルサービス仮想マシン(FSVM)は各ESXiホスト上に自動展開され、FSVM内でNFSとSMBのソフトウェアが格納されているコンテナが実行されます。そのため、ファイルサービスについては、コンテナを介して提供されます。

各コンポーネントの役割について説明をします。

  • ファイルサービス仮想マシン(FSVM)

    ファイルサービスを提供する仮想マシンです。
    固定のIPアドレスとドメイン名を割り当てます。クライアントからアクセスする際は、このIPアドレスもしくはFQDNにアクセスします。

  • コンテナ

    NFSおよびSMBの機能を提供するコンテナです。vSAN7.0U1ではSMB2, SMB3, NFSv3 ,NFSv4.1がサポートされています。

  • vSAN分散ファイルシステム(VDFS)

    ファイルサービス用として作成された、専用のファイルシステムです。vSANの上のレイヤーで提供されます。VDFSデーモンはESXi内で実行されます。

■検証環境

今回は以下のような環境で検証を行っています。当然ですが、バージョンは7.0 Update1です。

・検証環境
 ・ESXiホスト 4台
 ・vCenter Server 7.0.1(16858589)
 ・ESXi 7.0.1(16850804)
 ・Windows Server 2019(動作確認用)

■制限事項と考慮事項

vSANファイルサービスを利用するにあたって考慮しておく項目を以下に記載します。

  • 2 個のホスト クラスタとストレッチ クラスタはサポートされていません。
  • vSAN クラスタがメンテナンス モードに切り替わると、
    ファイル サービス仮想マシンがパワーオフされ、削除されます。
  • vSAN 7.0 は、32 個のファイル共有と 8 個のファイル サーバーをサポートします。
  • vSAN 7.0 Update 1 は、32 個のファイル共有と 32 個のファイル サーバーをサポートします。
  • 実行中の仮想マシンで、ESXi ホストから NFS 共有をマウントできません。
  • ホストがメンテナンス モードに切り替わると、プロトコル スタック コンテナが別の FSVM に移動します。メンテナンス モードに切り替わると、ホストの FSVM が削除されます。ホストのメンテナンス モードが終了すると、新しい FSVM がプロビジョニングされます。

■構築の手順

それでは、構築手順をご紹介します。

  • ファイルサービスの有効化

    ファイルサービスを有効化します。
    該当のクラスタをクリック後、「設定」→「vSAN」→「サービス」の順に開き、ファイルサービスの有効化をクリックします。ファイルサービスの構成ウィザードが開きますので、手順に沿って設定します。

以下はウィザードの設定手順です。

  • 概要

    概要を確認し、「次へ」をクリックします。

  • ドメイン

    ファイルサービスのドメイン名を決めて入力し、DNSサーバーとDNSサフィックスの値を入力します。また、SMBを利用する場合は、ADへの参加の設定も行う必要がありますので、Active Directoryにチェックを入れ、以下権限のあるドメイン名、ユーザー名、パスワードを入力します。
    ※ファイルサービス用にユーザーアカウントを作成するのがベストプラクティスです。

    • コンピュータ オブジェクトの作成と削除。
    • ms-DS-PrincipleName の読み取りと書き込み。
    • uPNSuffixes の読み取りと書き込み。
    • (オプション)DNS エントリの追加/更新
  • ネットワーク

    ファイルサービスが利用するポートグループを指定します。検証では仮想マシンのネットワークで使用しているVM Networkを指定しました。指定したポートグループのネットワークで使用されているサブネットマスクとデフォルトゲートウェイを入力します。

  • IPプール

    FSVM用の固定IPアドレスとDNSサーバーの正引き参照ゾーンと逆引きゾーンを入力します。DNSサーバーにはあらかじめ、IPアドレスとホスト名を登録しておく必要があります。

  • 確認

    設定した内容に間違いがないか確認し「終了」を押します。この時、FSVMのOVFファイルのダウンロードが自動で開始されます。今回の検証ではすでにダウンロード済みでしたので、以下キャプチャのような表示になっています。最新バージョン以外のFSVMを利用したい場合は、手動でOVFファイルをMyVMwareから取得し、vCenterにアップロードします。

  • タスクの確認

    ウィザードでの設定が完了すると、ファイルサービスを構築するためのタスクが実行されます。複数項目あるため、すべて終わるまで待ちましょう。検証ではおおよそ20分程度で完了しました。

  • 有効化の確認

    vSANファイルサービスが有効化されているか確認します。
    先ほど開いたvSANサービスの画面で、ファイルサービスが「有効」であることや、設定した値が表示されていることを確認します。

    また、展開されたFSVMも確認しておきます。vSphere Clientの「仮想マシン及びテンプレート」タブをクリックすると、「ESX Agents」というフォルダが自動的に作成され、その中に展開されていることが確認できます。

  • ファイル共有の作成

    続いてファイル共有を作成します。該当のクラスタをクリック後、「設定」→「vSAN」→「ファイル共有」の順に開き、「追加」をクリックします。ファイル共有の作成ウィザードが開きますので手順に沿って設定します。

以下はウィザードの設定手順です。

  • 全般

    ファイル共有の名前と使用するプロトコル、適用するストレージポリシーや容量に関する値を入力します。今回の検証ではタイトルにある通り、プロトコルをSMBにしています。(※もし、ここでSMBの選択肢がない場合はファイルサービスの有効化ウィザードのドメイン項目で、Active Directoryの設定が正常に行われていない可能性があります。)

  • 確認

    設定した内容に間違いがないか確認し「終了」を押します。

  • ファイル共有の確認

    ファイル共有が正常に作成されているか確認します。先ほど開いたファイル共有画面に、今回作成したもの(本検証では[vsan-share])が表示されていることを確認します。

    また、実際にWindows Server VM(クライアント)からアクセスが可能か確認します。
    作成したファイル共有を選択し、「コピーパス」→「SMB」をクリックします。
    すると自動的に、アクセスするためのパスがコピーされます。

    そのまま、確認用のWindows Server VMを開き、エクスプローラーにペーストします。
    ログイン情報を求められますので、「ファイルサービスの有効化」で参加したADに登録されているユーザー名とパスワードを入力します。

    無事にファイルサービスを受けられているかと思います。
    試しにファイルの作成なども行いましたが、正常に実行されました。

■まとめ

vSANファイルサービスの設定手順を説明しました。今回はvSAN7.0U1からサポートされたSMBに焦点を当てて構築しましたが、以前からサポートされているNFSと設定手順を比較すると、ADの設定が必須である点以外は同じため、1度経験がある方なら簡単に設定できるかと思います。

ちなみに、SMBを利用する場合で、vSphere 7.0→vSphere7.0U1にアップグレードを行う際は、FSVMのOVFファイルもアップグレードが必要になります。

特に、vSAN 7.0で一度ファイルサービスを構築している場合は、OVFをアップグレードしないと、警告が出ることもなく古いバージョンのまま構築されてしまうため、「なぜかSMBの選択がでてこない…」という事象が起きます。(私はそれでハマりました…)

本コラムが皆様のお役に立つと幸いです。

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