Azure 第13回『Azure のコストを削減する2つの方法』

Microsoft Azure の課金は従量課金制が基本となり、利用したリソースの量に応じて課金が行われます。従量課金される単価はあらかじめ決まっていますが、Azure で実行するソフトウェア(オペレーティングシステム、SQL Server)を既存のライセンスで実行する場合と、Azure で利用するリソースの量をあらかじめ予約する場合は、割引が適用され課金額を削減することができます。
今回はこの2つの割引について解説します。2つの割引は併用できますので、仮想マシンの場合最大で80%の Azure コスト削減が可能となります。

Azure ハイブリッド特典(Azure Hybrid Benefit、AHB)

Azure ハイブリッド特典は、Azure で実行するソフトウェア(オペレーティングシステム、SQL Server)を既存のライセンスで実行することで、Azure 上の仮想マシンやデータベースの課金に対して割引が適用できる仕組みです。
Azure ハイブリッド特典の対象となるライセンスには、以下のようなものがあります。

  • ソフトウェア アシュアランス付きの Windows Server Datacenter エディション
  • ソフトウェア アシュアランス付きの Windows Server Standard エディション
  • ソフトウェア アシュアランス付きの SQL Server Enterprise コア ライセンスまたは条件を満たすサブスクリプション ライセンス
  • ソフトウェア アシュアランス付きの SQL Server Standard コア ライセンスまたは条件を満たすサブスクリプション ライセンス
  • Red Hat Enterprise Linux サブスクリプション
  • SUSE Linux Enterprise Server サブスクリプション

これらのライセンスを既にお持ちの場合は、Azure ハイブリッド特典を利用することで Azure のコストを大きく削減できます。

Azure ハイブリッド特典の仕組み

Azure のマーケットプレイスから Windows Server のイメージを選択して仮想マシンを作成する場合、通常は Windows Server のライセンス料金込みの従量課金料金が適用されます。これに対して Azure ハイブリッド特典を適用して仮想マシンを作成すると、仮想マシンの料金が Windows ライセンス分を含まない基本コンピューティング料金のみとなります。
Red Hat や SUSE の場合も同様に、マーケットプレイスから仮想マシンを作成する場合、Azure ハイブリッド特典を適用して仮想マシンを作成すると、仮想マシンの料金が Red Hat / SUSE ライセンス分を含まない基本コンピューティング料金のみとなります。

同じように通常の従量課金の SQL Database では、コンピューティングの基になる Azure インフラストラクチャ(仮想化されたサーバー)と SQL Server ライセンスの両方に対してライセンス込みの価格で課金が行われます。これに対して Azure ハイブリッド特典では、SQL Server データベース エンジン自体には既存の SQL Server ライセンスを使用して、基になる Azure インフラストラクチャに対してのみ基本コンピューティングの価格で課金が行われます。

Azure ハイブリッド特典を仮想マシンで利用する

Azure ハイブリッド特典を適用した仮想マシンを作成するには、[仮想マシンの作成] - [基本] の画面で、画面下部にある [ライセンス] セクションのチェック(2か所)を有効にします。

また、既存の仮想マシンに Azure ハイブリッド特典を適用することが可能です。
Azure ハイブリッド特典の有効/無効の切り替えについては、以下を参照してください。

Azure ハイブリッド特典を適用した仮想マシンを作成した場合、Windows Serverでは Azure ハイブリッド特典ライセンス要件が満たされるようユーザーが管理・監視を行います。
Red Hat Enterprise Linux で Azure ハイブリッド特典を利用する場合は、あらかじめ Azure サブスクリプションと Red Hatサブスクリプションを Red Hat Cloud Access で登録する必要があります。
SUSE Linux Enterprise Server で Azure ハイブリッド特典を利用する場合は、SUSE カスタマー センターで登録の手続きを行う必要があります。

Azure ハイブリッド特典は通常の仮想マシンだけでなく、Azure Dedicated Host の仮想マシン、Azure Stack HCI および Azure Kubernetes Service (AKS) にも適用されます。

以下より引用

Azure 仮想マシンでAzure ハイブリッド特典を利用する場合、オンプレミスからの移行がスムーズに行えるよう、180 日間の二重使用権が提供されます。ハイブリッド特典を有効にしてから 180 日間は、オンプレミスのサーバーと Azure 仮想マシンの両方を同時に使用することが可能です。

Azure ハイブリッド特典を SQL Database で利用する

Azure ハイブリッド特典を適用した SQL Database を作成するには、[SQL データベースの作成] - [基本] の画面で、[データベースの詳細] セクションの [コンピューティングとストレージ] にある [データベースの構成] をクリックし、表示される [構成] 画面の [コストの削減] 欄で [はい] を選択します。

また、既存の SQL Database に Azure ハイブリッド特典を適用することもできます。
Azure ハイブリッド特典の有効/無効の切り替えについては、以下を参照してください。

SQL Database の Azure ハイブリッド特典を利用する場合も、オンプレミスの SQL Server からの移行がスムーズに行えるよう、仮想マシンの場合と同様に 180 日間の二重使用権が提供されます。ハイブリッド特典を有効にしてから 180 日間は、オンプレミスの SQL Server と Azure SQL Database の両方を同時に使用することが可能です。
Azure ハイブリッド特典は SQL Database だけでなく、SQL Managed Instance にも適用できます。

Azure ハイブリッド特典の割引率

Azure ハイブリッド特典での割引率は、利用するリソースの種類やサイズによって変わりますが、概ね40% 程度の割引が期待できます。
実際にどの程度の割引になるかは、以下の節約額計算ツールで試算することができます。

ハイブリッド特典と似た仕組みとして、ライセンス モビリティ(ライセンスの持ち込み)があります。これはオンプレミス/クラウドのどちらでも実行が認められているライセンスを利用して、Azure の仮想マシン上でソフトウェアを実行するものです。こちらについては以下の記事をご参照ください。

Azure の予約(Reservations)

予約(Reservations)とは今後利用する Azure のリソースをあらかじめ購入することです。向こう1年間または3年間のリソース需要を予測できると、Microsoft にとっては効率性の向上につながります。この利益の還元として最大72%の割引が予約の利用者に提供されます。
ユーザーは自分の Azure 利用の計画を立て、今後1年または3年で確実に必要となるリソースを決定します。そのリソースを予約として購入すれば、Azure のコストを大幅に削減できます。
Azure の予約はハイブリッド特典と併用できるので、その場合仮想マシンで最大80%のコスト削減が可能になります。

以下より引用

予約の対象となるサービス

  • Azure 仮想マシン(Windows / Linux)
  • Azure Dedicated Host
  • Azure VMware Solution
  • Azure SQL Database
  • Azure Database for MySQL
  • Azure Database for PostgreSQL
  • Azure Cosmos DB
  • Azure Synapse Analytics
  • Azure Cache for Redis
  • Azure Blob Storage
  • Azure Files
  • Azure Backup Storage
  • Azure Diks Storage
  • Azure App Service

なお、サービスごとに予約できる最低容量が設定されています。予約は最低容量以上で行う必要があります。

予約の仕組み

予約を購入すると、購入したリソースを割引料金で使用できます。

  • 仮想マシンの場合

    仮想マシンではワークロードの負荷に合わせてサイズの異なる複数のインスタンス(仮想マシン)を利用したい場合があります。こうしたニーズに対応して、仮想マシンの予約ではインスタンスサイズの柔軟性を適用できます。
    インスタンスサイズの柔軟性では、仮想マシンのシリーズ(DSv3 など)ごとにサイズ間の「比率」が決められています。以下の表の例では Standard_D16s_v3 の比率は8です。このインスタンスを予約した場合、そのまま Standard_D16s_v3 の仮想マシンを実行して利用料金の全体に割引を適用することが可能です。それに加えて Standard_D8s_v3 の仮想マシン(比率4)を2台実行して(合計の比率4×2=8)利用料金の全体に割引を適用することや、Standard_D4s_v3 の仮想マシン(比率2)を2台+Standard_D8s_v3 の仮想マシン(比率4)を1台実行して(合計の比率4+2×2=8)利用料金の全体に割引を適用すること、Standard_D32s_v3 の仮想マシン(比率16)を1台実行して利用料金の半分に割引を適用することも可能です。

    VM 名 VM グループ 比率
    Standard_D2s_v3 DSv3 Series 1
    Standard_D4s_v3 DSv3 Series 2
    Standard_D8s_v3 DSv3 Series 4
    Standard_D16s_v3 DSv3 Series 8
    Standard_D32s_v3 DSv3 Series 16
    Standard_D64s_v3 DSv3 Series 32
  • ストレージの場合

    ストレージの場合、予約の対象となるサブスクリプション内で、予約した容量の範囲内のストレージ アカウント、コンテナー、オブジェクトが割引料金で利用できます。
    予約を購入できる容量や単位は、ストレージの種類ごとに決まっています。

    ストレージの種類 購入できる容量
    BLOB ストレージ 1 PiB および 100 TiB 単位
    Azure Files 10 TiB および 100 TiB 単位
    Azure Backup ストレージ 1 PiB および 100 TiB 単位
    Azure Disk Storage P30(1TiB)以上の Premium SSD
  • データベースの場合

    データベース サービスの場合、予約はコンピューティング リソース(プロビジョニング済みコンピューティング)に対して行えます。また現時点では Standard シリーズでのみ利用可能です。
    ※vCore モデルおよびサーバーレス コンピューティング モデルでは予約は利用できません
    予約されたコンピューティング内にデータベースを作成して、割引料金で利用できます。

  • App Service の場合

    App Service の場合、Windows インスタンス / Linux インスタンス共に Premium v3 サービス プランおよび Isolated v2 サービス プランが予約の対象となります。
    予約されたサービスプラン内にアプリを作成して、割引料金で利用できます。

予約の購入

予約は Azure ポータルから購入できます。

  1. Azure ポータルに権限のあるアカウントでサインインして、「予約」を検索してください。
  2. 見つかった [予約] をクリックし、表示される予約ページで [追加] をクリックします。
  3. 予約購入できる製品の一覧が表示されますので、購入したい製品を選択します。
  4. 例えば仮想マシンを選択した場合は、以下のように予約するサイズを選択します。

    また当社から予約をご購入いただくことも可能です。購入についてのご依頼、ご相談は当社担当営業までご連絡ください。

まとめ

Azure ハイブリッド特典と予約を活用すると、Azure のコストを大きく削減できます。
既にソフトウェア アシュアランス付きの Windows Server / SQL Server ライセンスをお持ちで Azure への移行を検討されている場合は、Azure ハイブリッド特典をご活用ください。
また Azure を利用する上での今後のリソース需要が予測可能な場合、予約を利用してコストを削減することができます。
Azure ハイブリッド特典や予約についてのご相談は、ぜひ当社担当営業までご連絡ください。

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