Autodesk 業界別コレクションが登場

ラインアップを三つに絞りさらに提案しやすくなった

オートデスクは、従来まで提供していたSuite製品「Design Suite」と「Creation Suite」の販売を終了し、この8月から新たに「業界別コレクション」の提供を開始した。細分化されていたSuite製品を三つに集約した業界別コレクションは、各業界で必要とされる製品を幅広くパッケージングし、使いたい製品をより自由に使えるようにしたのが特長だ。販社にとっても提案しやすいパッケージに進化している。

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20種類以上あったSuite製品をシンプル化

 3D設計/2D製図ソフト「AutoCAD」を中心に、設計、製図に必要なさまざまなソフトを提供しているオートデスクは、従来までもCADソフトを必要とする業界向けに各ソフトをまとめたSuite製品を提供してきた。それが「Design Suite」と「Creation Suite」だ。建築や土木、製造、メディア・エンターテインメント業界で求められるソフトをまとめてパッケージングし、ユーザーのワークフローに合わせて提案してきた。しかし、Suite製品は種類だけで七つあり、さらに各Suite製品にはUltimate、Premium、Standardの三つのエディションが主に存在するなど、実質、20種類以上のSuite製品が存在していた。そのため、細分化されすぎていて柔軟性に欠ける面があった。

「ラインアップが多かったこともあり、お客さまが購入したSuiteの中に必要とするソフトが1本だけ含まれていないというケースもあったようです。そうした場合、Suiteとは別にソフトを購入していただかなければなりませんでした。ライセンスの管理もバラバラになるなど、お客さまに負担をかけてしまっていました」(オートデスク チャネルセールス 部長 草谷裕信氏)

 オートデスクが製品を提供する際に心がけているのは、ユーザーニーズに柔軟に対応できる製品をシンプルに提供すること。「柔軟性とシンプルを基軸に、スタンドアローンで提供してきたソフトをSuiteというかたちでまとめましたが、そのSuite製品をさらに進化させるために、当社がターゲットとする建築・土木、製造、メディア&エンターテインメントの三つの業界に特化した『業界別コレクション』を新たに開発しました。シンプルな三つのコレクションで、お客さまのニーズに柔軟に対応できるパッケージに仕上がっています」(オートデスク マーケティング統括本部長 田中克典氏)

3D活用を基軸にした三つのラインアップ

 業界別コレクションのラインアップは次の三つ。建設・土木業界向けの「Architecture, Engineering & Construction Collection」、製造業界向けの「Product Design Collection」、メディア&エンターテインメント業界向けの「Media & Entertainment Collection」だ。「これまで、建設業界向けと土木業界向けでSuite製品は分かれていました。しかし、実際には建築と土木の作業を一手に引き受けているユーザーは少なくありません。Suite製品の提供時はそれぞれの製品を別々に購入しなければなりませんでしたが、今回のコレクション製品Architecture, Engineering & Construction Collectionは、建設・土木業界向けのソフトがひとまとまりになっているため、追加でソフトを購入したり、バラバラにソフトを管理する手間を省けます」(オートデスク ワールドワイド セールス アンド サービス サブスクリプションセールス 日本担当マネージャー 国松いづみ氏)

 こうした利点はほかのコレクションでも共通している。製造業界向けのProduct Design Collectionでは、工場の設備や機械の製造工程をプランニングできるソフトから部品の設計ソフトまでがパッケージ化されているため、製造における上流から下流までの作業が一つのツールで実現する。また、Media & Entertainment Collectionでは、アニメーション編集で使用される『3ds Max』とゲーム開発で使用される『Maya』が含まれていて、両方を利用するユーザーに対して訴求力が高い。「実際、3ds MaxとMayaを併用しているお客さまは少なくありません」(国松氏)

 これらのコレクションは、3D活用が基本になる。現在、建築や土木では人手不足の補完やコストの削減、工期短縮のために3Dデータの活用が進められている。例えばドローンを利用して3Dの測量データを作成したり、建築物の3Dデジタルモデルを活用するBIMの利用が主流になりつつある。こうした流れにおいて、3Dとクラウド活用を基本とした今回のコレクション製品は大きな訴求力を持つ。「これから必要とされる3Dやクラウドを本格的に活用するのであれば、業界別コレクションがお薦めです」(草谷氏)

ARCHITECTURE, ENGINEERING & CONSTRUCTION COLLECTION 建設・土木業界向けコレクション

ARCHITECTURE, ENGINEERING
& CONSTRUCTION COLLECTION
建設・土木業界向けコレクション

内容
Revit / AutoCAD Civil 3D / InfraWorks 360 / AutoCAD / AutoCAD Architecture / AutoCAD Electrical / AutoCAD Map 3D / AutoCAD MEP / AutoCAD Plant 3D / AutoCAD P&ID / AutoCAD Raster Design / AutoCAD 360 Pro / AutoCAD Utility Design / クラウド ストレージ(25 GB) / FormIt 360 Pro / Insight 360 / Navisworks Manage / ReCap 360 Pro / A360 でのレンダリング / 3ds Max / Structural Analysis for Revit / Vehicle Tracking

PRODUCT DESIGN COLLECTION 製造業界向けコレクション

PRODUCT DESIGN COLLECTION
製造業界向けコレクション

内容
Inventor Professional / AutoCAD / AutoCAD Architecture / AutoCAD Electrical / AutoCAD Mechanical / AutoCAD 360 Pro / クラウド ストレージ(25GB) / Factory Design ユーティリティ / Fusion 360 / Navisworks Manage / ReCap 360 Pro / A360 でのレンダリング / Vault Basic / 3ds Max

MEDIA ENTERTAINMENT COLLECTION メディア&エンターテインメント業界向けコレクション

MEDIA ENTERTAINMENT COLLECTION
メディア&エンターテインメント業界向けコレクション

内容
Maya / 3ds Max / MotionBuilder / Mudbox / Character Generator / A360でのレンダリング / ReCap 360 Pro / クラウドストレージ(25GB)

プッシュ型のビジネスを推進

 業界別コレクションはSuite製品のPremiumと同程度の価格に設定されていながら、利用できるソフトやクラウドサービスが増えているため、コストメリットがかなり高い。サブスクリプション契約でバージョン管理も不要。「永久ライセンスと比較して初期導入費用が抑えられるため、中小規模の企業でも導入しやすいメリットがあります。期間プロジェクトなどにも有効です」(田中氏)

 業界別コレクションでは、一つのライセンスを1人で利用する「シングルユーザーライセンス」に加えて、一つのライセンスを複数ユーザーで共有できる「マルチユーザーライセンス」も利用可能だ。マルチユーザーライセンスは、同時起動数で制限されるため、複数人で交代でソフトウェアを利用するようなユーザーに提案したい。

 草谷氏は「エンドユーザーにとって業界向けのソフトが豊富にパッケージングされた三つの業界別コレクションは、導入の是非の判断がしやすく、資産管理が容易です」と魅力をアピールする。田中氏は、「販売パートナーにとっては、各業界に適したソフトがまとめられているため、提案しやすい製品です。継続的に利益を得られるサブスクリプション販売のメリットも享受できます」と解説。そして国松氏は、「業界別コレクションは、お客さまからの要望に応じて製品を販売するプル型のビジネスから、お客さまに積極的に提案していくプッシュ型のビジネスへの移行を促します。2D製図に特化したAutoCAD LT製品ユーザーに対して、3D設計を基本とした業界別コレクションの提案を進めていくことも可能でしょう」と期待を語る。

左から
ワールドワイド セールス アンド サービス
サブスクリプションセールス
日本担当マネージャー 国松いづみ氏

マーケティング統括本部長
田中克典氏

チャネルセールス 部長
草谷裕信氏

(PC-Webzine 2016年10月号掲載記事)

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