サーバー向け最新CPU、その真の実力とは?

 デジタル変革の推進は、従来のサーバー/データセンターの再設計により現実のものとなる。IoT時代が本格化し、何百億台ものデバイスがネットに接続される状況下では、氾濫するデータを高効率でさばく新たなサーバーシステムのデザインが必要だからだ。

 鍵を握るのは“頭脳”たるCPUである。もともと安定性・信頼性が必須となるサーバーには、高速処理や大量のデータ分析を得意とする専用のサーバー向けCPUが搭載されている。これらサーバー向けCPUはテクノロジーの進化とともに飛躍的に性能が向上。とりわけ近年の発展はめざましく、次々と次世代のビジネスをリードするプラットフォームが開発されている。

 2017年7月、サーバー/データセンター向けCPUの代名詞とも言えるインテル® Xeon® プロセッサーの最新版となるインテル® Xeon®スケーラブル・プロセッサーが発表された。一体これまでのモデルとはどこが違い、何がどのようにスケールアップしたのか。特長を拾い上げながら分かりやすく紹介していこう。

従来製品と比較して、性能向上は平均1.65倍に

 インテル® Xeon® プロセッサーシリーズでは、サーバー/データセンター向けCPUの代表格だ。高性能・信頼性・敏捷性を備え、現在も世界中のサーバー/データセンター用途に利用されている。

 そしてインテル®では2017年7月、大幅なアーキテクチャ更新を図った最新モデル「インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー」を発表。この10年間で最大規模となるプラットフォームの進化を遂げ、時代のニーズに即した新たな機能強化を図った。

 具体的には、演算性能を高めた新しい命令セット「インテル® Advanced Vector Extension 512 (インテル® AVX-512)」の搭載、データ暗号・圧縮処理アクセラレーター「インテル® QuickAssist テクノロジー」をチップセットに内蔵、最大4本の10GbE対応ネットワークコントローラ内蔵による運用効率の向上などである。

 最大の変化は、前世代までインテル® Xeon® プロセッサーE7/E5のシリーズで分かれていたプラットフォームを1つに統合した点にある。ミッション・クリティカル用途のハイエンドモデル「インテル® Xeon® プロセッサーE7」と、価格性能比の高いメインストリームモデル「インテル® Xeon® プロセッサーE5」をひとつのCPUモデルにまとめることで、プラットフォームの分断を回避。このコンバージド・プラットフォームにより、従来以上の柔軟な構成が可能となった。
 同一プラットフォームへと進化したことにより、CPUのグレードは「Xeon® Platinum」「Xeon® Gold」「Xeon® Silver」「Xeon® Bronze」へと変更。上から順に、データセンターなどミッション・クリティカル向け、汎用的な演算・ネットワーキング、中程度のタスク、軽量なタスクとターゲットが明確に分類されており、それぞれのビジネス用途に最適化した構成を選択できる。

 命名規則や数々の進化点を含め、今回のアップデートは自動車にたとえればフルモデルチェンジといったところだ。例えば中小規模で用途の多いインテル® Xeon® プロセッサー E3 シリーズからのリプレース対象としてはXeon® Bronzeが想定されるが、このエントリーモデルでさえシングルソケットから2ソケットへと根幹からアップグレードしている。Xeon® Silverはさらにマルチ・スレッド・アプリケーション向けにインテル® ターボブーストとインテル® HT テクノロジーを搭載しており、処理能力をぐんと高めた。

 メインストリームのXeon® Gold、最上位のXeon® Platinumはそれぞれインテル® Xeon® プロセッサーE5、インテル® Xeon® プロセッサーE7の代替候補となるが、性能、機能、信頼性・セキュリティをハードウエア・ベースで拡張し、大幅な性能向上を実現。前世代製品との相対性能比較で平均1.5~1.65倍のパフォーマンスを発揮する。

 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーはすでにアマゾン、マイクロソフト、グーグル、AT&Tなどから支持を受けており、次世代のサーバー/データセンター基盤の標準となりつつある。この状況を鑑みても、まさに今こそデジタル変革を見据えたサーバーリプレースのベストタイミングと言えるだろう。

AIやハイパフォーマンス・コンピューティングにも強み

 人工知能(AI)、機械学習、IoTに欠かせないビッグデータ分析といった超高度な計算処理を実行する「ハイパフォーマンス・コンピューティング(以下HPC)」。サーバー市場においてもHPC分野は今後さらなる重要性を増すとされ、調査会社のIDC Japanは2014~2019年にかけてのHPCサーバーの年間平均成長率を3.1%と予測している(2015年時点)。

 インテル® Xeon®シリーズは、HPCサーバーでも強みを持つ。それがHPC向けに特化した「Xeon® Phi」だ。同社が開発していたメニーコア・プロセッサーをベースとした並列計算に強い演算プロセッサーであり、2012年に第一世代を発表。2016年には第二世代へアップデートし、アーキテクチャを刷新。1チップに最大72コアを搭載し、1秒あたりの浮動小数点演算命令実行回数は3テラFLOPS(毎秒3兆回の浮動小数点演算)を超える倍精度ピーク性能を提供する。
 その実力を端的に示すデータがある。年2回発表される世界のスーパーコンピュータ(スパコン)性能ランキング「TOP500」の最新版(2017年6月版)において、トップ10内にXeon® Phiを用いたスパコンが2台ランクイン。そのうち、7位に食い込んだ「最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)」は筑波大学と東京大学による共同研究組織で、同施設が運用するスパコン「Oakforest-PACS」には、2016年に発売したXeon® Phi 7250が搭載されている。

 今やHPC向けプロセッサーを搭載したワークステーションが、日常のデスクサイドで利用できる時代となった。前述したAI、機械学習はもとより、最近ではディープラーニングにもXeon® Phi搭載ワークステーションやサーバーが活用されている。これらの技術は自動運転、自動音声・画像認識、自動翻訳、リアルタイムの不正検知、コンテンツの自動作成など、未来の社会を切り拓くエンジンとなる。ここまで紹介してきたように、サーバー向けCPUは新たなフェーズに突入しようとしているのだ。

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