Cisco 担当者コラム
Cisco・Designedラボ
Designedラボ 第36回 「Cisco L2スイッチの新製品 Catalyst 1000 シリーズのご紹介4 ~PoEの給電容量を確認してみた~」
こんにちは。ディーアイエスサービス&サポート株式会社でシスコ製品担当エンジニアをしております斎藤です。
前回に引き続きCiscoから新しく登場したL2スイッチ「Catalyst 1000 シリーズ」についてご紹介させていただきます。Catalyst 1000はPoE/PoE+に対応したデバイスで、C1000に接続したAP等はイーサネットケーブルから電力供給ができます。そこで今回は、実際にAPを接続してPoE給電ができるのか、またPoEを利用する際の注意事項を確認してみたいと思います。最後までぜひご覧ください。
改めてPoEとは?
皆様ご存知の機能かと思いますが、改めてPoEについて確認をしておきます。PoEとは、Power over Ethernetの略称であり、イーサネットケーブル、いわゆるLANケーブルを通じて電力を供給する技術のことです。データ通信と電力供給を1本のLANケーブルで行うことができる為、PoE対応の機器(APやWebカメラ等)を、例えば、天井や壁面などの通常電力供給が難しい場所に設置することが容易になります。配線がシンプルになることで、設置工事費用が削減できますし、レイアウトもきれいになるということです。
そんなPoEですが、2003年6月にIEEE 802.3afとして標準化され、その後拡張規格としてIEEE 802.3at(通称PoE+)、IEEE 802.3bt(通称PoE++)が標準化されています。PoEやPoE+という用語はよく目にすると思いますが、データシート等ではIEEE802.3af/atのように表記される場合もある為、IEEE802.af/at=PoE/PoE+のことなのだとご認識いただければと思います。またこれらPoE規格には下位互換性がある為、PoE+(802.3at)に対応しているスイッチではあれば、PoE(802.3af)にしか対応していないAPに対しても電力供給が可能です。当たり前のことかもしれませんが、給電側(PSE:スイッチ等)と受電側(PD:Webカメラ、AP等)の両方がPoEに対応している必要がありますのでご注意いただければと思います。
PoEとPoE+の主な違いは、最大電力供給量になります。
PoE(802.3af):最大給電15.4W
PoE+(802.at):最大給電30.0W
つまり、PoE対応のスイッチであれば、1ポートで最大15.4W、PoE+対応のスイッチであれば、1ポートで最大30.0Wの電力供給が可能というわけです。
Catalyst 1000はPoE/PoE+に対応したL2スイッチです。PoE給電が必要なエンドデバイスはほとんどが電力消費30W以内かと思いますので、Catalyst 1000であればPoE給電用のスイッチとして安心してご利用いただけるかと思います。
Catalyst 1000シリーズの電力供給量について、データシートをもとに確認してみました。
まずラインナップには、C1000-8T-2G-LのようにPoE対応していない機種がございます。こちらの機種にはAPを接続しても電力供給ができませんので選定の際はご注意ください。
またPoE電力供給のW数が機種によって異なります。例えば、C1000-8P-2G-Lの場合、PoE電力供給量が67Wとなっておりますので、PoE(802.3af:15.4W)対応の機器を接続する場合、最大消費量電力から計算して最大4台まで電力供給が可能ということになります(15.4W×4=61.6W)。つまり、C1000-8P-2G-L では8ポート全てにPoE対応機器を接続しても、うち4ポートでは電力供給ができない可能性が出てきます。
Catalyst 2960LではフルPoEモデルがありませんでしたので、C1000のフルPoEモデルであれば1台で多くのPoE給電を賄えることがお分かりいただけるかと思います。
さて、ここまでは概要的な説明をさせていただきました。しかしながら、もしかすると「いやいや、実際APは15.4Wも消費しないから、8ポート全部挿しても使えるでしょ」とお思いになった方がいらっしゃるかもしれません。おっしゃる通りで、上記の表で示しているのあくまで、最大消費電力で計算した台数となりますので、例えば、1815iの消費電力をデータシートで確認しますと、
・消費電力 8.3 W(最大、PoE 使用)
と記載されており、計算上は1815iを8台繋いでもPoE給電可能のように思います。実際使えるのでしょうか?こちらに関して実機を用いて確認してみたいと思います。
PoEの給電確認は、show power inlineコマンドで確認することができます。
早速、手元にあった802.3at対応AP1852iとAP2802iをC1000-24P-4G-Lに接続し、show power inlineコマンドを入力してみます。
--------------------------------------------------------------------
Switch> enable
Switch# show power inline
Module Available Used Remaining
(Watts) (Watts) (Watts)
------ --------- -------- ---------
1 195.0 46.5 148.5
Interface Admin Oper Power Device Class Max
(Watts)
--------- ------ ---------- ------- ------------------- ----- ----
Gi1/0/1 auto on 19.9 AIR-AP1852I-Q-K9 4 30.0
Gi1/0/2 auto off 26.6 AIR-AP2802I-Q-K9 4 30.0
Gi1/0/3 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
~~~中略~~~
Gi1/0/23 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
Gi1/0/24 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
Switch#
--------------------------------------------------------------------
AP接続直後はCDPによるネゴシエーションを行っている為、ステータスが正確に表示されませんが、2、3分待機してからshow power inlineコマンドを入力しますと上記のような表示がされます。一覧のPower(Watts)部分を見ますと、スイッチとAPのネゴシエーションの結果、AP1852iは19.9W、AP2802iは26.6W消費していることが分かります。つまり、これらのAPはしっかりと必要な電力供給量を自動調整されていることになります。
では他の受電機器を試してみましょう。今回、PoE(802.3af)対応のAPが手元に無かったので、802.3af対応のWebカメラであるMeraki MV32を使用し、給電量を確認してみます。
--------------------------------------------------------------------
Switch# show power inline
Module Available Used Remaining
(Watts) (Watts) (Watts)
------ --------- -------- ---------
1 195.0 15.4 179.6
Interface Admin Oper Power Device Class Max
(Watts)
--------- ------ ---------- ------- ------------------- ----- ----
Gi1/0/1 auto on 15.4 Meraki MV32 Cloud M 0 30.0
Gi1/0/2 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
Gi1/0/3 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
~~~中略~~~
Switch#
--------------------------------------------------------------------
Meraki MV32は15.4Wを消費していることが分かります。Meraki MV32のデータシートを確認しますと、最大消費電力は12.95Wと表記されている為、一見するとネゴシエーションした結果、15.4Wを払い出しているように見えますが、実はMV32とはネゴシエーションされていない状態で、15.4Wの払い出しをしています。
これは、CDPによりでクラス情報をやり取りしており、クラスごとに最大電力供給量が決定します。
MV32はクラス0と判別されておりますが、クラス0の場合は、ネゴシエーションが行われずに15.4Wが払い出されてしまいます。今回は、12.95W必要なMV32に対して、15.4Wの給電が行われた為さほど問題ありませんでしたが、場合によっては余分な給電が行われることによって、必要なPoE給電できないポートが発生してしまうかもしれません。
こういった問題は、特にCisco以外のメーカーの製品をC1000に接続した場合に発生しがちなのですが、目安としては、Classの欄に0が表示されている機器は余分な給電が行われている可能性があります。しかし、もしも自動調節できず、例えば4W必要な機器に15.4W送信している場合があったとしても、power inline consumptionコマンドにより手動で調節することが可能となっています。それでは試しに、MV32の給電量を13.0Wに設定してみましょう。
--------------------------------------------------------------------
Switch# configuration terminal
Switch(config)# interface gigabitEthernet 1/0/1
Switch(config-if)# power inline consumption 13000
%CAUTION: Interface Gi1/0/1: Misconfiguring the 'power inline
consumption/allocation' command may cause damage to the switch and void
your warranty. Take precaution not to oversubscribe the power supply.
It is recommended to enable power policing if the switch supports it.
Refer to documentation.
Switch(config-if)# end
Switch#
Switch# show power inline
Module Available Used Remaining
(Watts) (Watts) (Watts)
------ --------- -------- ---------
1 195.0 13.0 182.0
Interface Admin Oper Power Device Class Max
(Watts)
--------- ------ ---------- ------- ------------------- ----- ----
Gi1/0/1 auto on 13.0 Meraki MV32 Cloud M 0 30.0
Gi1/0/2 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
Gi1/0/3 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
~~~中略~~~
Switch#
--------------------------------------------------------------------
これで確実な給電量を設定することができました。ただし、実際の給電量には、イーサネットケーブルの長さや環境による電力の損失というものあるらしいので手動で設定する場合は設定する電力量にご注意ください。
導入に際しては、まずshow power inlineコマンドで給電量を確認し、変更が必要な場合はpower inline consumptionコマンドをご活用ください。
以上です。最後までご覧いただきありがとうございました!
引き続きよろしくお願い致します。
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