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HPC(High-Performance Computing)とは?

HPCとは“High-Performance Computing”の略称で、その名の通り一般的なPCやサーバーと比べ極めて高速な計算処理が可能なコンピュータ環境、あるいはそれらを使った計算処理のことを指します。いわゆる「スーパーコンピュータ」もHPCの一種といえますが、広義のHPCはハイエンドなスーパーコンピュータだけでなく、一般企業でも導入・利用可能な高性能コンピュータ環境全般を含みます。
かつてのHPCは、超高速計算や特殊用途に特化した専用プロセッサーやハードウェアを使った極めて大型・高価なものが大半を占めていましたが、現在のHPCは汎用プロセッサーをベースにした並列分散処理アーキテクチャをベースにしており、より汎用的な用途で広く使われるようになりました。

また、クラウドサービスとしてHPCを提供するクラウドベンダーも増えてきており、一般ユーザーにとってもHPCはかなり身近な存在になりつつあります。

汎用的な用途で使われ始めたHPC

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市場動向

HPCの市場は現在、右肩上がりで成長を続けており、今後も同様の傾向が続くと予想されています。IDCのHPCチームがスピンアウトして設立された米国の調査会社ハイペリオン・リサーチが行った調査によれば、サーバーやストレージ、ミドルウエア、アプリケーションなどを含むHPCソリューション全体の2016年の市場規模は約224億ドルに上ります。また2021年には約302億ドルに達すると予想されており、5年間で6.2%の成長が見込まれています。

<HPC市場の予測データ>
  2016 2021 年平均成長率
サーバー 11,200 14,819 5.8%
ストレージ 4,316 6,269 7.8%
ミドルウエア 1,277 1,786 6.9%
アプリケーション 3,739 5,071 6.3%
サービス 1,907 2,309 3.9%
合計 22,439 30,253 6.2%

出典:Hyperion Research

この背景には、科学計算や軍事開発、製造業におけるシミュレーションなど、従来から存在するHPCのニーズが依然堅調であることに加え、大量データを高速分析することでビジネス上の知見を得るビッグデータソリューションのニーズが増えてきていることがあります。近年ではこうした用途を「HPDA(High Performance Data Analysis)」と呼び、従来のHPC用途と区別することもあります。

またAWS(Amazon Web Services)をはじめとするパブリッククラウドベンダーが、HPCをクラウドサービスとして提供するビジネスも台頭しつつあり、順調に売上げを伸ばしています。HPC市場全体の中で占める割合はまだ小さいものの、今後も順調にビジネスを伸ばしていくものと予想されています。

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どんな用途で利用されているか?意外と身近な利用例

HPCはもともと、膨大な計算リソースを必要とする高度な科学計算や気象予測、軍事技術の開発など、学術研究や国家プロジェクトといった特殊な用途で主に使われてきました。現在でもこうしたニーズは依然として多いのですが、CPUやメモリなど、HPCを構成するITリソースの価格性能比が飛躍的に向上し、一般企業にとってもHPC環境が比較的身近になって以降は、製造業や金融業をはじめ、民間の産業界においても広く使われるようになりました。

たとえば製造業においては、主に製品の設計開発工程におけるシミュレーション用途で広く使われています。これまでは実際に試作品を作って行ってきた風洞実験や衝突実験などを、HPCによるコンピュータシミュレーション環境で仮想的に実行できるようになり、製品の開発期間やコストの大幅な短縮に寄与しています。

また製薬企業でも、薬品の研究開発における化合物の分析などにおいて、HPCの強力な計算能力は欠かせない存在になっています。

自動車の空力シミュレーションや薬品の開発研究などにHPCが利用されている(写真はイメージ)

金融業界においては、主に金融商品開発時のリスク分析や、ファンド運用におけるポートフォリオ設計などにAIが広く使われるようになっており、大手金融企業によるHPC導入が進んでいます。

一方、近年にわかに注目を集めるようになってきているのが、AI(人工知能)におけるHPCの役割です。特にディープラーニング(深層学習)と呼ばれるAI技術においては、膨大な量のデータを高速に処理できるコンピュータ環境が欠かせません。こうした新たな用途に対応すべく、GPGPUやメニーコアCPUなどの技術を応用してAI用途に最適化したHPC製品が次々と登場しています。

今後、本格的なIoT時代が到来すると、さらに膨大な量のデータ処理が必要とされる場面が増えてきます。
こうしたことからも、今後HPCのニーズはますます増えていくと予想されます。

HPC提供メーカー一覧
メーカー 製品名 特長
Supermicro uperServer 7048GR-TR インテル® Xeon® プロセッサーを搭載し、最新のGPUであるNVIDIA Tesla V100を4台搭載可能。Deep Learningに最適なスーパーサーバーです。
DellEMC PowerEdge C6420 2Uラックに最大4つの2ソケットサーバーと大容量ストレージを搭載し、高い柔軟性を備えるプラットフォーム。要求の厳しいHPCおよび高い拡張性が求められるワークロードに対応します。
NEC Express5800/D120h 優れた演算能力と拡張性を有した2Way/2U高密度モジュラーサーバー。 ディープラーニング用途に最適な高性能と拡張性を備えたGPU搭載モデルをラインナップしています。
HPE HPE Apollo 6000 HPEでは、規模や所在地を問わず、製造・金融・医療・エネルギー・教育などさまざまな業界や組織でご利用いただけるHPCソリューションを提供しています。
Lenovo ThinkSystem SD530 ブレード型の高密度とラック型サーバーの経済性を実現。モジュール式 I/O シャトル設計、追加トレイとの組合せにより、ノードあたりGPU2 基搭載に対応し、XClarityによる管理が可能です。

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