[ DISわぁるど in とちぎ宇都宮 ] セミナー・パネルディスカッションレポート

【特別講演】IoTが実現する世界とイノベーション

インテル株式会社 セールス・チャネル事業本部 執行役員 本部長 井田晶也氏

インテル株式会社
セールス・チャネル事業本部
執行役員 本部長
井田晶也氏

新しいテクノロジーがもたらす変化に期待

 CPUやメモリーなどの半導体の技術革新をけん引し、世界のITの普及と進展に尽力してきたインテルではIoTをはじめとした新たなコンピューティングを推進している。インテル株式会社 セールス・チャネル事業本部 執行役員 本部長 井田晶也氏は常に新しいテクノロジーがビジネスや生活の利便性を向上させるなど有益な変化をもたらしてきたと振り返りながら、IoTやAI、VRなどの現在の新しいテクノロジーがもたらす変化に期待すると話した。

 現在では1人1台のPCは当たり前で、複数台のデジタル機器を活用する人も多い。使われるデバイスが増加し、種類も増えたことで活用の多様化が進んでいるが、これらの活用はデータセンターの共通の環境で運用できると説明。こうした現在のクラウド環境がIT活用を支えていると説明した。

 ところが実際のデータを見ると、2020年には世界に500億台のデバイスと2,120億台のセンサーが存在し、それらの85%はネットワークに未接続だという。

 またインターネット上でやり取りされるデータは現在は8ゼタバイト、2020年には44ゼタバイトに増大するという。ちなみにゼタバイトという単位はギガ、テラ、ペタ、エクサのさらに上の単位になる。

IoTの進展によるデータの増加でサーバー需要が拡大

 デバイスやセンサーをネットワークに接続することで新しいサービスが生まれることは、過去の経緯を振り返れば誰もが想像できるだろう。デバイスやセンサーなどあらゆるモノがつながるIoTは新しいサービスを生むためのツールと言える。

 しかもIoTを構築するコストは格段に安くなっている。例えばセンサーのコストは過去10年間で半分になった。帯域幅のコストも過去10年間で40分の1となっている。さらにデータを処理するコストは過去10年間で60分の1となった。

 今後さらに安くなる可能性があり、IoTが普及して市場が成長する環境が整っている。インテルではIoTについて3段階の戦略を持っている。ネット接続、スマート化、自動化だ。

 インテルはデータセンター向け、特定用途向けのCPUの開発を継続していく。AIやディープラーニング、コグニティブコンピューティングの領域で強みを持つ企業がインテルグループに参加してもらうことで、包括的なエコシステムを構築してサービス提供していく。

 IoT、AI、ディープラーニング、コグニティブコンピューティングの利活用が広がることでサーバーの需要が拡大する。データが増加することでそれを処理するための半導体の需要が拡大するからだ。

 インテルはムーアの法則を継続しており、コスト、電力、性能を引き続き向上させ続ける。その結果、1台のサーバーで250個のカメラ、225台のスマートフォン、40台の自動運転車、2店のRFIDを活用した店舗に対応できる効率が実現できる。

IoTゲートウェイであらゆるモノをネットに連結する

 今後、カーシェアリングやタクシーの配車サービス、民泊など、既存の遊休資産を有効活用するシェアリングエコノミーが発達してデバイスとインターネット、データの利活用が増加する。

 また例えば空調管理や製造システム、水道の管理など社会や企業のインフラもネットワークに接続されて運用・管理の効率化が進む。

 そうした中でデバイスやセンサーのスマート化は必須となるが、前述の通り85%がネットワークに未接続となっている。デバイスやセンター単体でネットワークに接続できない場合、インテルではIoTゲートウェイというエッジデバイスを提供して相互連結する。

 IoTゲートウェイはネットワークへの接続に加えてエッジでデータを活用したり、セキュリティ対策を講じたりできるマルチデバイスとしても機能できる。

 そして井田氏はインテルのIoTへの具体的な取り組みについて、四つの事例を紹介した。まずある地ビールメーカーの流通改革での活用だ。従来の業務の運用・管理で在庫ミスやオーダーミスが20%、それに伴うはビア樽当たりのビールの廃棄率が10から15%、顧客が望む商品が品切れの場合のビールの消費量が3分の1だった。

 そこでビア樽にセンサーを取り付けて重さをリアルタイムで把握することで在庫量が正確に把握できるとともに、POSデータとの連携で売れ行きを確認することで仕入れを調整したり、特売したりして廃棄率を改善したという。

 国内農業でのIoT活用ではハウス内の栽培環境をセンサーで測定してデータを分析することで、作物に適した栽培環境を見出してレシピ化する取り組みが行われている。

 ジーンズメーカーで知られるリーバイスでは店舗にある商品にセンサーを取り付けて在庫を正確に把握することで売り上げを伸ばしているという。

 最後にインテルのペナン工場でIoTを活用した工場全体の生産効率可視化システムを富士通と共同で2017年4月より実証を開始している。例えばエネルギー使用量などの工場内の環境情報を日次で可視化したり、工場全体の設備稼働状況をリアルタイムに可視化したりするなどして、タイムリーな改善や対策を実現する取り組みを進めている。

※セミナーのプレゼンテーション資料の著作権についてはインテル株式会社に帰属します。

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