2026年7月28日に「令和8年熊本地震」が発生した後、2026年8月13~14日には「令和8年8月千葉豪雨」が発生した。さらに2026年8月23日の茨城県南部を震源とする地震では、2021年10月7日以来となる約5年ぶりに、東京23区で震度5弱以上が観測された。こうした立て続けの自然災害だけでなく、中東情勢の悪化といった不安も抱える現代において、データのバックアップをはじめとしたBCP対策は急務になっている。そこで本記事では、全国の企業のBCP策定状況について、企業信用調査などを行う帝国データバンクに話を聞いた。
大企業と中小企業で策定率に格差
2026年は7月28日に「令和8年熊本地震」、8月13~14日に「令和8年8月千葉豪雨」と自然災害が立て続けに発生したほか、7月に大手企業がサイバー攻撃を受け、幅広い顧客の業務に影響を及ぼす事態があった。加えて2月から続く中東情勢の不安もあり、企業は速やかにBCP対策を講じた方がよい状況だ。例えばデータのバックアップが行えていないと、災害やランサムウェア被害の後に業務を再開できず、企業にとって大きなダメージとなってしまう。
こうした中で帝国データバンクは、企業に対して「2026年の事業継続計画(BCP)」に関するアンケート調査を実施した。なお調査期間は2026年5月18~31日、調査対象は全国2万2,749社、有効回答企業数は1万521社(回答率46.2%)だ。同社はBCPに関する調査を2016年以降毎年実施しており、2026年で11回目となる。
本調査によると、BCPを「策定している」企業の割合は21.4%だった。2025年の前回調査から1ポイント増加し、過去最高の数値となっている。一方で「策定していない」企業は40.7%と、依然として4割を超えている状態だ。また、「策定している」(21.4%)、「現在、策定中」(7.2%)、「策定を検討している」(21.9%)を合わせた「策定意向あり」は50.5%に達し、半数の企業が導入に前向きな姿勢を示していることが分かる。
BCP策定率を企業別に見ていくと、「大企業」は前年比1.2ポイント増の39.9%であるのに対し、「中小企業」は同1.2ポイント増の18.3%となった。共に上昇傾向にあるものの20ポイント以上の差が付いており、規模感格差がある状況は継続している。帝国データバンク 情報統括部 情報統括課 中村駿佑氏は、この状況について「中小企業はスキル、人材、時間の不足が、BCPの策定が進まない原因になっています。しかし、いずれもすぐに解決できる問題ではなく、簡単に取り除くのは現実的ではありません。そのため、策定率の低さは仕方がない部分もあると考えています」と解説する。
災害リスクの高さが意識の高さに
では、都道府県別のBCP策定意向を見ていこう。都道府県別の策定意向ありの割合は、富山が62.5%、高知が61.7%と6割を超える結果になった。次いで香川が59.5%、静岡が58.3%、佐賀が57.9%、愛媛が57.8%、奈良が56.9%、鹿児島が56.7%、和歌山が56.4%と続く。
中村氏は、この結果を以下のように分析する。「災害のリスクが高い地域は、BCP策定についての意識が高い結果となりました。愛媛、香川、高知といった四国地方や、静岡、和歌山、鹿児島といった太平洋に面している県は、駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域とする『南海トラフ地震』の被害が想定される地域です。そのため南海トラフ地震に備えて、BCP策定意向が高くなっています。また富山や石川(53.2%)といった北陸地方は、2024年1月に発生した『能登半島地震』をきっかけに高い結果が出ています」
しかし策定意向が高い四国地方の中でも、徳島のみ42.5%と5割を切る結果になっている。中村氏はこの理由を、次のように推測する。「回答数が少ないためブレがあるところもありますが、過去の値を見てもあまり高い数値が出ていない傾向になっています。明確な理由は分かりませんが、都市圏と異なり中小企業が多い地域になるため、低い結果になっているのかもしれません。中小企業の策定意向の低さが、県としての策定意向の低さにつながっている形です。山口をはじめとした中国地方も策定意向が低いですが、こちらも同様に中小企業の多さが原因だと考えられます」
また中村氏は、都道府県別の策定率にこう言及する。「本調査は2026年5月18~31日に行われたものです。そのため、直近で起きた令和8年熊本地震や令和8年8月千葉豪雨の影響は反映されていません。今後調査を行った場合は、これらの自然災害をきっかけに、九州地方や千葉県のBCP策定意識が高まるとみています」
それでは企業は、具体的に何を事業継続が困難になるリスクだと考えているのだろうか。策定意向ありの企業に尋ねたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が67.8%で最も高かった。次いで「情報セキュリティ上のリスク」が50.2%、「設備の故障」が37.9%、インフルエンザ、新型ウイルスなどの「感染症」が37.3%と続く。
中村氏は、リスクについての結果をこう解説する。「自然災害は毎年1位を獲得しています。2位の情報セキュリティ上のリスクは前年比4.1ポイント増の50.2%で、初めて半数を超えました。アサヒグループホールディングスやアスクルといった大手企業へのサイバー攻撃が相次いだこともあり、各企業のサイバー攻撃への意識が高まっているのが見えてきます。また今回の調査では、6位に『物流の混乱(供給制約など含む)』が同9ポイント増の36.5%で入っています。これは調査期間中の5月に、中東情勢の影響による物資の不安が世間で語られていたことが理由です」
また中村氏は、今後のリスクの順位変化について以下のように予測する。「情報セキュリティ上のリスクの懸念が、自然災害の懸念を上回る可能性はないとは言えません。しかし自然災害は、日本で生活する上で常に感じるリスクです。そのため、これから数年ですぐに情報セキュリティ上のリスクが自然災害を上回ることは考えにくいでしょう」
BCP「策定意向あり」~都道府県別~
出所:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)(帝国データバンク)
日常会話からBCPの策定を始める
帝国データバンク
情報統括部 情報統括課
中村駿佑 氏
次に、各企業が事業が中断するリスクに備えて実施、あるいは検討している内容を見ていこう。調査の結果、最も多かった回答は「従業員の安否確認手段の整備」で65.3%となった。次いで多かった回答は、「情報システムのバックアップ」で59.5%だった。「地震や豪雨の際、まず従業員の安否が確認できないと、今後の業務をどうしていくかという意思決定が行えません。一番手っ取り早くできることからも、1位になっていると考えられます。2位の情報システムのバックアップは、サイバー攻撃のリスクが高まっていることと連動してきます。リスクの高まりに合わせて、バックアップの必要性も高まっているのです。情報システムのバックアップは、業務停止期間の最短化やデータ損失リスクの回避に直結します」(中村氏)
最後に中村氏はBCPの策定について、以下のように提言した。「現在は建設業などで、BCPの策定が入札の加点対象になるケースが出てきています。ただ中小企業では、今すぐBCPを策定するのが難しい場合もあるでしょう。その際は一気に策定を進めるのではなく、簡単なところから対策を始めていくとよいです。例えば自然災害が起きた際の連絡手段を決めておくなど、そうした話題を日常会話の中で出しておけば、少しずつBCPの策定が進んでいくと思います」