HPEがパートナーに提供できる価値とは? 第2回

ハイブリッドIT向けコンパクトサーバーで
パートナーのソリューション販売を推進

顧客ニーズの変化への即応、そして、販売パートナーとのさらなる連携強化を目指して実施された分社化。その分社化によって体制が整った日本ヒューレット・パッカード(HPE)が提供する製品やサービスは、エンドユーザー、そして販売パートナーにどのような価値をもたらすのか。4回の連載で紐解く。

3月9日、日本ヒューレット・パッカード(HPE)は、ハイブリッドITの実現を支援するコンパクトサーバー「HPE ProLiant Thin Micro TM200」の提供開始を発表した。同サーバーはクラウド連携にも使えるシンプルなサーバーで、販売パートナーとの協業によるソリューション提供が推進されるという。連載の第2回目は、その発表会の模様をレポートする。

mainpic1

■ 市場背景 ■ ハイブリッドIT提案を支援してきたHPE

「市場のさまざまな変化がエンタープライズITの形を変えています」。

 発表会の冒頭、HPE データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 データセンター・ハイブリッドクラウド製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏はこう切り出した。特に顕著なのは、ハイブリッドITの加速だ。オンプレミスとクラウドやパブリッククラウドとプライベートクラウドを併用するハイブリッドITへの企業投資が拡大しているのだ。

 ただし、オンプレミスとクラウドを活用するハイブリッドITは、導入や運用・管理面で複雑な作業が必要になってしまう可能性もある。そこでHPEは、エンドユーザーがハイブリッドITをシンプルに導入・運用できるように、各種の取り組みを行っている。

 例えば、クラウドとの連携を簡易かつ短期間で実現するアプライアンスやパッケージモデルの推進、オンプレミスとクラウド間のアプリケーションの可搬性や連携を強化するハイブリッド技術への投資などだ。また、販売パートナーに対しては、ソリューションの開発や販売にフォーカスした支援プログラムを提供し、エンドユーザーへのハイブリッドIT提案をサポートしている。

 そうしたHPEの取り組みの一環として今回発表されたのが、小規模向けのハイブリッドIT向けサーバー「HPE ProLiant Thin Micro TM200」(以下、TM200)の提供と、「TM200ソリューションコミュニティ」の開設だ。

HPE データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 データセンター・ハイブリッドクラウド製品統括本部 統括本部長 本田昌和氏

■ コンパクトサーバーTM200の魅力 ■ 中小企業のハイブリッドIT導入を促進

 TM200の基本コンセプトは「ハイブリッドITをシンプルに実現」である。このコンセプトに至るユーザー課題について、HPE データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 データセンター・ハイブリッドクラウド製品統括本部 サーバー製品本部の前田裕貴氏は次のように指摘する。

「システムのクラウド化が進展していますが、すべての環境をクラウドに移行することはできません。そのため、ハイブリッドIT環境の構築が進んでいるのですが、特に中小企業環境の小規模システムにおいては、ハイブリッドITの管理の複雑性や、オンプレミスとクラウドの適材適所の配置の難しさに加えて、オンプレミス用のサーバーの導入や設置における根本的な課題も存在します」

 そこでTM200では、まずオンプレミス用サーバーの導入・設置の問題を解決するために、「どこにでも置ける」「サーバークオリティ」「導入が簡単」の三つが実現された。幅254×奥行き254×高さ49.5mm、重量2.83kgという本体は手持ちも可能で、スペースの限られたオフィス環境に最適だ。利用シーンに応じて設置形態を変えられるように、通常の平置きに加えてスタンドスタイルや壁掛けスタイルがオプションキットを使うことで可能になっている。

HPE データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 データセンター・ハイブリッドクラウド製品統括本部 サーバー製品本部 前田裕貴氏

 TM200はコンパクトながら高いサーバークオリティも備えている。プロセッサーをはじめとして、メモリーやディスクはProLiantで共通のサーバー用デバイスを採用し、サーバーOSや仮想化ハイパーバイザーもサポート。ProLiantに共通の管理チップ「iLO4」が搭載されているので、遠隔操作や障害監視も可能だ。また、シンプル構成による手軽な導入を実現させるため、TM200には小型化と低消費電力を可能にするSoC インテル Xeon プロセッサー D-1500 製品ファミリーが採用されている。

 ハイブリッドITの管理や導入の複雑さを解消するためにHPEがTM200の提供とともに企図しているのが、TM200を軸にしたトータルソリューションの創出だ。「TM200と各種のソフトウェアの検証済みの構成から、必要なソリューションを選択できるようにしていきます」と前田氏は展望を語る。例えば、TM200とクラウウドへのバックアップソフトウェアを組み合わせた「クラウドバックアップソリューション」や、TM200とセキュリティソフトウェアを組み合わせた「セキュリティゲートウェイ」のようなソリューションの提供が想定されている。

 こうしたソリューションをカタログ化することで、中小企業ユーザーにおけるオンプレミスとクラウドの適材適所の活用の難しさの課題も解決できると前田氏はアピールする。

■ TM200のパートナー施策 ■ ソリューション開発・販売をコミュニティで支援

 TM200の販売施策について、HPE 執行役員 エンタープライズパートナー営業統括 エンタープライズアカウント営業統括本部 統括本部長の佐藤真人氏は、「いかに販売パートナーさまと協調して販売していけるかに尽きます」と断言する。このような視点を持つHPEは従来から「IT EcoSystem」という場を作り上げてきた。これは優れたソリューションを持つISVと、販売網を持つ販売店、そしてHPEが、お互いの技術やノウハウを共有させることでエンドユーザーに大きな価値を提供する仕組みであり、実際にIT EcoSystemを通じていくつものソリューションが生み出されてきた。

 今回、TM200の提供に際してHPEでは、ISVや販売店のソリューション提供を支援するために「TM200ソリューションコミュニティ」を開設し、ソリューション開発と販売推進のための支援策を提供していく。

 開発支援として用意されているのは、「TM200検証機貸し出しプログラム」と「開発・デモ用機械割引プログラム」だ。貸し出しプログラムでは、ソリューション開発用の検証用機器を1社につき1台無償で借りられる。割引プログラムでは、開発・デモ用機械として1拠点につき1台を希望小売価格の55%引きで購入できる。

 販売支援として提供されるのは、開発したソリューションのHPE Webサイトへの掲載や、HPEによるプロモーション活動、販促物の作成支援、セミナー・イベントの費用支援など。また、ユーザー事例の作成やIT EcoSystem Forumの登壇枠の提供なども用意されている。TM200ソリューションコミュニティに参加し、これらの開発・販売支援を活用することで、販売パートナーはTM200を軸とした新たなソリューション開発とビジネスチャンスの創出が行いやすくなる。

「TM200ソリューションコミュニティへの参加によるソリューション開発によって、全国の中小企業ユーザーにTM200を軸にしたソリューションビジネスを展開していただきたいですね」と佐藤氏は販売パートナーへの期待を熱く語った。

HPE 執行役員 エンタープライズパートナー営業統括 エンタープライズアカウント営業統括本部 統括本部長 佐藤真人氏

(PC-Webzine 2017年4月号掲載記事より転載)

HPEの記事