SNS広告やバナー広告をはじめとしたWeb広告に注目が集まる中でも、デジタルサイネージ広告には高い需要がある。デバイス越しではなく実空間で視聴者の目に触れるデジタルサイネージ広告は、現在どのような市況になっているのだろうか。今回は同市場の調査を行ったデジタルインファクトとLIVE BOARDに、デジタルサイネージ広告市場の現状やセグメント別の規模、注目のトピックについて話を聞いた。
生活動線上での広告接触が有効
デジタルインファクトとLIVE BOARDはCARTA HOLDINGS監修の下、共同でデジタルサイネージ広告市場の調査を実施し、2025年10月21日にその結果を発表した。なお本調査におけるデジタルサイネージ広告とは、公共機関、商業施設、屋外などに設置された、デジタルで稼働するサイネージ上に表示される広告を指す。また、デジタルサイネージの設置者および関係者を除く、第三者が広告宣伝活動などを目的に費用を支払うことで利用ができるものを対象とする。市場規模は、広告主によるデジタルサイネージ上で表示される広告媒体に対する年間支出総額としている。一部、商取引上媒体費と制作費が不可分とされているものを除き、媒体費のみを対象とする。
そうした前提を踏まえ、2025年のデジタルサイネージ市場の広告市場規模は、前年比116%の1,110億円の見通しとなった。この背景について、デジタルインファクトリサーチャー柏 海氏は次のように話す。「デジタルサイネージ広告市場は、引き続き安定した成長を続けるとみています。その背景の一つに、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、外出・移動規制の逆風を乗り越えたことがあります。コロナ禍は視聴者の接触がデジタル広告に偏重していましたが、今は街中や店内といったリアルな場面で視聴者に接触し、臨場感のある映像表現を届けられるデジタルサイネージ広告の需要が高まっています」
ではなぜ、デジタルサイネージ広告の需要が高まっているのだろうか。柏氏はその理由をこう語る。「生活動線に根差した場所で広告に接触すると、視聴者の記憶に残りやすいからです。スマートフォン越しに広告に接触するよりも、視聴者自身の体験として広告に接するため、印象に残りやすくなるといわれています」
デジタルサイネージ広告市場規模推定2024-2030年
出所:デジタルサイネージ広告市場調査2025年:LIVE BOARD/デジタルインファクト調べ
※ 2024年は実績値、2025年は見込値、2026年以降は予測値。
液晶からLEDへのリプレースが増加
それでは、セグメント別の規模推計を見ていこう。各セグメントの割合は、交通が522億円で全体の47%、商業施設・店舗が260億円で全体の23.4%、屋外が192億円で全体の17.3%、その他が136億円で全体の12.3%を占める結果となった。
最も割合を大きく占める交通について、柏氏は現状をこう話す。
「交通は先行してサイネージの設置が進んでいたため、市場をけん引してきたという前提があります。それを踏まえると、現在は主要な場所へのサイネージ設置がほぼ完了し、数年前からリプレースが始まっている現状が見えてきます。また価格の低下に加え、より豊かで没入感のある映像表現を目指すことを理由に、液晶ディスプレイからLEDディスプレイへ変更する事例も増えています」
LEDディスプレイへのリプレースが増えていることには、価格や映像表現以外にも理由があると柏氏は続ける。「LEDディスプレイは大きさや形状が自由なこともリプレースの理由です。液晶ディスプレイにも100インチといった大型の製品はありますが、熱や紫外線に弱く、直射日光が当たると視認性が下がるなど、屋外に設置する上での課題を抱えていました。一方LEDディスプレイは、熱や紫外線に強い上に視認性も高く、100インチ以上の大型サイズも用意可能です。そのため大型のサイネージで、きれいな映像表現を行いたい場合は、LEDディスプレイへと置き換えるようです」
しかし、全てLEDディスプレイに置き換わるわけではないそうだ。「多くの人に見てもらえるなど、広告を打つ価値が高い場所は、LEDディスプレイに置き換わるでしょう。そのほかの場所については、従来通り液晶ディスプレイでの運用になったり、逆にアナログなパネル広告に変更したりすると考えられます」(柏氏)
またセグメントの割合についても、今後変動が生まれる可能性があると柏氏は語る。「交通の割合が大きい状況は変わらないものの、商業施設・店舗は今後さらに成長を続けるでしょう。大手コンビニチェーンが全国の店舗にサイネージを設置し、広告を配信する取り組みが成功を収めるなど、市場を盛り上げる事例がいくつか出てきています」
OOH広告の共通指標を設定
デジタルサイネージ広告市場の注目トピックとして、2025年9月に広告主・広告会社・媒体事業社など広告業界全体を対象とした業界横断組織「日本OOHメジャメント協会」(JOAA)が設立したことが挙げられる。
JOAAは、消費者が家庭の外で接触するあらゆる広告媒体を指す「OOH広告(OOH:Out Of Home)」の効果測定と指標の共通化の推進を目的に設立された。OOH広告の価値を可視化するため、業界共通指標の開発・提供を通じて、広告主が安心してOOH広告を活用できる環境の整備を目指しているのだ。
LIVE BOARDストラテジー部広報リーダー加藤花奈実氏は、JOAAについてこう補足する。「今まで日本のOOH市場では、各社ごとに独自の基準でデータ運用をしてきたため、事業社間での評価基準が異なっていました。そうした中で、共通指標を作るために立ち上がったのがJOAAです。この共通指標には、『OOHグローバルメジャメントガイドライン』で推奨されており、当社も採用している、最も厳しい基準のVAC(Visibility Adjusted Contact:のべ広告視認者数)が採用されました。これにより、インプレッションベースで媒体の価値を確認できるようになったことが、業界の大きな転換点になっています。こうした取り組みによって、デジタルサイネージを介して広告配信の自動化が行えるデジタル屋外広告『プログラマティックOOH』の市場も拡大すると思っています」
最後に加藤氏は、デジタルサイネージ広告市場の現状を踏まえ、販売店にこうメッセージを送る。「当社では、工事中の仮囲いを活用したサイネージ『OMOTESANDO WALL BOARD』といった取り組みを始めています。これは仮囲いスペースにLEDを設置し、デジタルサイネージとして活用するものです。このようにデジタルサイネージは現在、さまざまな利用方法が生まれています。従来とは異なる、新しい活用法が提案できるようになっているのです」
LIVE BOARDストラテジー部広報鏡 詩織氏も、以下のように語った。「OMOTESANDO WALL BOARDで利用しているサイネージは、次の設置場所や現場で再利用可能な仕様になっています。今後も広告主さま・広告会社さまとアイデアを出し合い、多様な活用可能性を広げたいですね」
デジタルインファクト
リサーチャー
柏 海 氏
LIVE BOARD
ストラテジー部
広報 リーダー
加藤花奈実 氏
LIVE BOARD
ストラテジー部
広報
鏡 詩織 氏